豊洲新市場の風評被害を防げるのか 

土壌中のベンゼンを土盛りして遮断するはずの豊洲新市場の主要建物の地下が空洞で、土盛りされていないことが明らかになり、都への信頼が大きく揺らいだ。このままでは福島みたいな風評被害が広がりかねない。当時の民主党政権があいまいな情報を次々に発表しては訂正等を重ねたために信頼を失い、原発から遠い会津地方を含めて福島全県の農産物が根拠のない風評被害に見舞われた。産地の涙ぐましいほどの努力にもかかわらず、今も完全にはぬぐえていない。

今朝、テレビを見ていたら、ベンゼンの有害性を説明するのに、かつてタンカーの油槽内部の清掃中に起こった作業員の死亡事故に触れていた。タンカーの油槽内部のベンゼンの濃度と土壌から大気中に蒸発する濃度は比べものになるまい。にもかかわらず、ベンゼン=死亡事故=猛毒というイメージを植え付けている。

ベンゼンは以前は家庭用にも販売されていた揮発油で、よく染み抜きに使われた。発がん性が指摘されて今は家庭用の揮発油としては売られていないが、ガソリンには含まれているようだ。長期に吸引するとガンを引き起こす危険がある有害物質だという。しかし、猛毒というわけではない。たとえ地下から魚市場の建物内に蒸発してかなりの濃度になっても、その魚を食べてガンになるほどの毒性はあるまい。ただし市場で働く人は長期に吸引することになり、危険であろう。

今回の隠蔽の裏には、都の担当部局や設計・施工者の側に、盛り土に対して「ベンゼンごときでそこまでやる必要があるのか」「何も知らない連中が〈食の安全〉をがなりたてるのには、うんざりだ」といった意識が暗黙のうちにあるのではないだろうか。設計は変更したけれど、表に出すと市民団体がうるさいし、反対運動がぶり返すから、そっとやってしまおうと思ったのだとしたら、「民には知らしむべからず」の愚民策で、情報公開の意義を知らない愚かなことだ。

生鮮食料の市場としては、ベンゼン以上に緊急の危険がある。O-157などの細菌で、食中毒や深刻な感染症を引き起こし、多数の死亡者が出る可能性がある。築地でハエが発生しないのは塩水で清掃しているからだが豊洲新市場では塩水を使えないということも聞く。そのあたりの衛生管理は、どうなっているのか。

また、海洋に漂うマイクロプラスチックス、PCB、ダイオキシン類などが市場で取引される魚介類の可食部分にどの程度含まれているのか。青果の残留農薬はどうなのか。それらの検査体制と、わかりやすく公表する仕組みはどうなっているのか。そうした衛生管理体制の全体を公表し、そのなかにベンゼンなど有害物質の検査のしくみも位置づけるべきであろう。

公衆衛生には世界に冠たる実績をもつ日本で巨費を投じて建設する新市場であるからには「〈食の安全〉を極めた世界でもっとも衛生的な市場」を目指したのではなかったのか。

このまま信頼を欠いてベンゼン問題ばかりがクローズアップされると、「豊洲市場の魚も野菜も毒だ」という風評が広がりかねない。それを防ぐには、新市場の衛生管理の全体像をわかりやすく公表し、批判を恐れず説明していくことしかあるまい。一部に隠蔽があると全体の信頼を失うのだから、たとえ不都合な事実でも公表するしか道はない。

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